「あらあ、お父さん、またテレビの通販で商品まとめ買いしちゃった!」と認知症のある患者さんの娘さんから、たびたび相談を受けることがありました。
ご家族の対策としては来てしまった商品を返すとか、そういったことしかできません。日頃の診察でも「見てすぐ欲しいと思わないでくださいね」とお伝えしても、こういったアドバイスはどこ吹く風、同じことが繰り返されてしまいます。
こういった衝動買いを止める薬剤は残念ながらなく、自宅には一人では置けないと老人ホームにその方は入られました。
理事長 松原 清二
先日、認知症学会で、KAERUという、あらかじめお金を定額入れておき、1日に使える額を家族が設定できるカードがあると発表がありました。
このときに先ほどの患者さんを思い出し、日々使えるお金の上限をさまざまな形で決めてあれば、この患者さんは家でもっと過ごせたんだろうなあと感じさせられました。
医療をやっていると医療の世界の中だけで物ごとを考えてしまいがちですが、医療や介護の問題に対してさまざまなジャンルから知を集結すれば、より創造的に在宅で認知症の方を支えられるようになるのかもしれません。
また、認知症の方も安心して暮らせる街になるんじゃないかと思いました。