最近、患者さんの配偶者の往診依頼を受けることが増えてきました。訪問診療をしていると、主な介護の担い手であるご家族の持病が悪化し、介護の継続が危ぶまれるケースによく出会います。
在宅医療とは、実は一人の患者さんを診るだけでなく、ご家族にも常に気を配りながら、慎重に進めるという側面があります。当院にかかっている患者さんは基本は家で可能な限り過ごしたいという方がほとんどです。そのため主たる介護の家族が健康を悪化させても、在宅医療をなんとか続けたいという方が多いのです。そうしたことから、介護者の病状悪化時には、患者さんの訪問診療時に速やかにご家族の方への往診での加療を行っています。例えば尿が出なくなり、数日動けなかった介護者のご主人に対し、エコーで尿閉を確認、膀胱にバルーンを留置し点滴治療を行い、機能しなかった腎臓を速やかに回復した例。また、家族中がインフルエンザになり、薬も飲めない状況でインフルエンザの点滴加療をした例などが挙げられます。
このように、患者さん、ご家族にとって当院の医療が力強い存在でありたいと思う一方で、そうした対処だけでは不十分だと感じるようにもなりました。病気のために崩れそうになる生活への支援が足りないからです。そこで当院では生活面を支えるベテランのケアマネージャーを配置し、訪問看護師やヘルパーの手配など介護サービスの提供なども行う「居宅介護支援事業所」を設置しました。
これからの高齢社会では、医療と介護の融合は必須のテーマです。当院も、生活と医療、両面の支援を綿密にできる在宅医療専門の医療機関でありたいと思っています。
Dr.matsubara2019-04