まつばらホームクリニックの看護師・齋藤雅子です。
今回のコラムは、私が書かせていただきます。
20年間訪問看護に携わってきた経験をもとに、認知症になっても自宅で暮らせる地域について考えます。先日放送されたNHKスペシャル「認知症の第一人者が認知症になった」は、痴呆症の呼び名を認知症と改めさせ、「長谷川式」といわれるその診断法を編み出した長谷川和夫医師の現在の生活を追っていました。
認知症と診断された長谷川先生は、介護の必要な奥様と二人暮らしで、娘さんが介護のために通ってきています。
認知症になり物忘れが進むと、自分が何者だか分からなくなり不安に襲われます。
それでも奥様がそばにいると安心できます。仕事を続けていると社会に役立っていると実感できるし、なじみの喫茶店に行くことは楽しみです。娘さんは先生に失敗させまいと外出に付き添いますが、意見をしてもめることもありました。
介護家族の休養のためにと先生が提唱したデイサービスには、ご自身が利用者となって行ってみたものの、「孤独だ」とやめてしまいます。また家族に迷惑をかけまいと施設に入所することを考え、下見のため短期間利用しましたが、家に帰りたくなります。
一人で外出して道に迷ったとき、出先で転んで顔をすりむいたとき、通りがかりの人が家まで付き添ってくれていました。認知症の高齢者数は、今年約630万人(およそ6人に1人)になると推計され、誰もがなり得る病気です。
認知症になった方がさまざまな問題を抱えながらも地域で暮らすには、家族、医療や介護サービスだけでなく、近所の方々の小さな手助けが必要なのではないかと考えさせられました。
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Ns.Saitou2020-02