最近はソーシャルディスタンスを取るようになり、新型コロナウイルス(COVID―19)の新規発症は著しく減りました。
一方でこのソーシャルディスタンスにより従来の人とのコミュニケーションのあり方を見直すようになりました。会議や飲み会はZOOMソフトを使ってやり取りをし、意外にも家でできる仕事が多いこともわかりました。
ご自宅で介護をされている方の中にも、テレワークをし始め、お身内の介護を手伝うことができるようになったという例もあります。80代男性のがんの方のケースです。少しずつ食べられなくなり、足腰が弱り始め、トイレまで行く際にふらつきが強く、患者さん自身をご家族が数人で支えなければならないという状態でした。
あるとき、トイレに連れて行ったものの、そこで患者さん自身が崩れるように倒れたため、以降はベッド上での生活へ移行されました。
このようなときご家族は、目の前で起こる急激な患者さんの容態の変化に戸惑うものです。そこで、必要に応じて当院の夜間看護師が訪問し、ご家族に患者さんの容態の変化についてご説明し、さらにご家族に〈患者さんはご自宅での療養を最期まで希望されている〉ということの意思の確認を行い、万一、介護の負担が重すぎるようならホスピス入所という選択があることなどをお伝えします。
このケースでもご家族と話し合い、改めて、医師の私と相談することに決めました。ところがです。後日私が伺った際には、奥さまは看護師がお伝えしていたオムツの交換の仕方を習得されていて、「お父さんが最期まで家にいたいと言っていたから私は頑張る」と、ご主人の介護に自信をお持ちになっていました。そして実際、患者さんの希望に沿う形で、最期まで家で安らかに過ごすことができました。
今回のCOVID―19では、自宅待機中の娘さまも主たる介護者であるお母さんを心配されていましたが、介護に一つずつ自信を持って成長していくお母さんを最後のほうでは安心してご覧になっていました。今回の出来事では人々が自宅待機を余儀なくされる一方で、家族内の絆の見直しや家族の力の大きさを改めて感じさせられました。
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Dr.matubara 2020-6