明けましておめでとうございます。
さて、2025年は団塊の世代が後期高齢者に突入、認知症や心不全患者数も急激に増える時代になります。
先日、榊原記念病院から「認知症を抱えた難治性心不全の患者さんが在宅で1年間過ごせたことについて話してもらえないか」と声を掛けられ、事例検討会という形で参加させてもらいました。
入院中にせん妄が強くなり、家で看ていけるのだろうか。まして難治性の心不全もあるし……という認知症を抱えた難治性心不全患者さんが当院に紹介された事例です。
理事長 松原 清二
自宅では患者さんは、「パン屋で大好きなクリームパンを見て、焼きたてのパンの香りを嗅いだら、食べたくなった」などとおっしゃったので、それを目標にリハビリをして、実際に食べることができ、「おいしかったよ」と満面の笑みを浮かべていました。
しかし時を経るにつれ心不全が悪化して、息切れが出るようになり、また今までできていた人工呼吸器のマスクの装着も手順が分からなくなるなど、心不全、認知症が悪化していきました。そこでご自宅で強心剤の持続点滴を行ったところ、息切れや認知機能の改善が見られました。
ただ残念ながら、在宅での治療そのものはご本人・ご家族ともに負担が大きかったようで、結局、再び入院を選ぶことになりました。とはいえ、1年間自宅で過ごせたということは、ご本人たちにとっても驚きだったようです。
このケースを例に、検討会では、在宅でも治療を行うことが大切であることや、患者さんやご家族との話し合いを繰り返し、本人たちが受け入れられる治療選択肢の提示や方針決定をするべきだということをお伝えしました。
実のところ、現状では心不全治療には課題が多く、集中治療もせいぜい点滴処置などが2週間程度で、長期の治療は想定されていません。その点、末期がんなどとは異なります。そのためか、心不全の管理に後ろ向きな在宅医療機関や訪問看護ステーションも多数あると聞いています。検討会では、制度上の問題もあることが指摘されていました。
心不全管理そのものは、ある程度医師の経験や医療機器も必要ですが、在宅では制度上の問題も理解しながら患者さん管理に関わっていくことも同様に必要と改めて感じました。