心不全の患者さんで、薬の内服が1週間で4勝3敗(3日は飲まない)の方がいます。1年ほど診察していますが、原因が分かりません。いつも薬をご本人に差し出しているご主人も理由が分からず、困っています。
「いつも薬は飲みなさいと言って出すのですが、飲まないんですよね」とご主人はご立腹、言われた奥さんはちょっと気まずそうな雰囲気……が診療の日常光景です。
理事長 松原 清二
先日メジャーリーグの試合が流れていて、ちょうど大谷翔平選手がバッターボックスに入るところで、「さあ、大谷がバッターボックスに入りました」とアナウンサーの声が聞こえると、ご主人が「一時休戦」と切り出し、みんなでしばし野球観戦をしました。そして、その後は「仕方ないなあ。薬毎日飲みなよ」と場が和みました。
また、他の患者さんでは、在宅酸素療法をしているがんや呼吸器疾患を抱えている方ですが、普段は数メートル歩くだけで息も絶え絶えになってしまい、それでも何とか生き続けられないかと精神的におつらい思いをされているのですが、大谷選手の試合の観戦中だけは日頃からは信じられないくらい大きな声を出して応援をされているとのことで、奥様から笑顔でご様子を伺っています。
前回生きがいについて書きましたが、大谷選手は本当に多数の方に生きる張り合いを与えていると思いました。医療というのは患者さんを支える手段の一つにしか過ぎませんが、患者さんの気持ちの張り合いには何が必要かと日頃のコミュニケーションで見つけていかないといけませんね。