
2025年4月19日・26日(土)のラジオ在宅NOWの放送のご案内です。
2025年4月後半のテーマは「在宅医療とラジオについて(2)」です。
在宅医療とラジオについて(2)
進行:田中ヒロコさん 回答者:松原清二 理事長

では、松原先生、本日もどうぞよろしくお願いいたします。

よろしくお願いします。

先生、前回はラジオについて思いを語っていただきましたが。

今回は「ラジオでエールを送ろう」それがテーマです。

エールを送ろう。

「入院患者さんにエールを送ろう」という言い方のほうが正しいと思います。

10年来、付き合いのある患者さんなんですけど、仮にKさんとしましょう。
Kさんは50代男性の方で、肺がんで骨に転移していて、それで脊髄転移もあり、両足が動かないという方なんですけど、その方、今回床ずれがひどくなっちゃって入院したんです。

すごく入院嫌いな人で、お話聞くとそうかなあというのは分かるんですけども、とにかく入院すると自分が自分でいられなくなるということなので、なるだけ日頃のKさんとの思い出や、エールや、僕の思いなどを伝えられたらなというふうに思っています。

Kさんが入院していると先生は会えないんですよね。

会えないですね。
とても面白くて陽気な男性の方で、今の時代NGかもしれないんだけど、結構忙しくて昼ご飯を食べる暇もない時が仕事上たまにあったりするんですけど。
そうするとうちのスタッフにKさんが「どう、忙しい?」って言うと、「ちょっと忙しいです、お昼ご飯食べる暇ないくらいです」というふうに答えたんですよ。

そしたらそのKさん、「バナナとかむいて食べればお昼ご飯になるでしょう」とか言ったりしてたんですよね。それで、Kさん「俺は絶対そんなこと言えないよ」とか言って(笑)
今の時代ちょっとどうなのかなと思いながらも、サラッと言っちゃうところがおもしろいなという。

Kさん…。そうなんですね。でもなんか明るい方ということですよね。

本当にあと面白いのが、家族中が調子悪いなあという時があって、Kさんが家族に「お前らだらしねえなあ」とか言って、その程度で病気になるのかっていう話をしてたら、家族に「お前が病人じゃないか」とか言われて…。

それすごい家族あるあるですね~。

その人ね、面白いなあこの人って思うんだけど。

でも、家族の方もそうやって気兼ねなくというか、気を遣わずお話できる間柄ということですよね。Kさんのお人柄もあるかと思うんですけど、言っても大丈夫みたいな感じの・・・・。

でもその人いろいろ本当に教えてくれて、我々医療従事者の欠けているところというのもあって。
青木くんも言っていたんだけど、在宅診療でお医者さん来るときにどういうふうに待ち受けしていればいいのか、準備とかどうしたらいいのかという質問があったんだけど、Kさんは本当にそういうようなことを仰っていて。

どういうことかと言うと、お医者さん(お客さん)が来る時に、何でもいい格好じゃないんだと。やっぱりそれなりに準備もしなきゃいけないし、例えば自分たちの生活リズム、お風呂があったりご飯があったりということもあるからそれなりの心構えもあるし、部屋もある程度きれいにしておかないといけないし。

ということで、心構えがどうしてもあるから、ある程度きっちり時間を守ってほしい。
うちの場合2時間枠なんだけど、その枠内でやってほしいという話をしていた時には、「患者さん家族ってそういう気持ちなんだなあ」というのは結構教えてもらえることもありました。

やっぱり、きちんと伝えてくださるという。

自分の言葉できちんと教えてくれるということだよね。だからさっきのように冗談めいたことをおっしゃることもあれば、自分の言いたいことはきちんと言えるっていうような人。

それで、一回かかとの床ずれができたときに、結構深かったもんですから、骨のところまで行っちゃったことがあって、それで入院するって話したときにちょっと嫌がってたんですけど、でもこのままじゃなあということでまあ一回入院してもらって。

結局やっぱり入院辛かったんでね。入院辛くて、ある程度処置したら「もう頼むから家に」と言って家に帰ってきて。

1年ぐらいだいぶ良かったんですけど、それからやっぱり残念ながらちょっと床ずれがひどくなっちゃって、またご入院されたというケースがあるんですよね。
でも、Kさんの気持ちを考えるとなんか本当に、本当に辛いんだろうなあというか。

Kさんは入院はなんで嫌なのですか?

病気をしている人、いわゆる病人って、動ける人と比べて不自由を感じることが非常に多いし、それを一つ一つ言葉にすること自体が多分ためらいもあるし、頼むのも多分ためらいもある。だけどできないこともためらいがある。

自宅だと、ためらいに関してはご家族にためらいもなく言うことができるし、そういうのが非常に家のほうがいいという感覚だと思うんですけど、病院だとそれが全くできない。

完全にアウェイですね。

アウェイ。もちろん、病院は病院で否定する気も全くないんだけど、効率的に医療するという意味ですごく良いところだと思うんだけど、ただマンツーマンで付いているわけじゃないから、困ったなあと思ってナースコールを鳴らしても現実問題すぐに来れるというものでもないから、それが積み重なると結構辛いだろうなあというのは思うんですよね。

で、今Kさんは・・・?

まだ1ヶ月以上入院しています。

今されてらっしゃるんですか?

しています。

Kさん元気ですか?元気かなどうかな?

本当に、そうなのよ。だから、なんとなく毎週決まった曜日に往診に行っていて、まだ診察のリストに載っていないんだと思うと、ちょっともの寂しく感じて、あと大丈夫かなというふうに思ったりもするんですよ。

先生も(Kさんが)入院されると、毎週毎週見ていらっしゃった患者さんに会うことができないから、状態というのはやっぱり分からない感じ・・・?

奥さんが、この前クリニックに来たりとかいろいろ教えてくださったりっていうのがあるんだけれど、でもやっぱり本人に会えてないし入院がすごくしんどいという人だから、大丈夫かなあというのが常にあります。

そうなんですね。それで先生も、いつもそういった心配を・・・。

それはあるし、あの人と接しているとこちらが元気になれるところがあってね。さっきのバナナの話とか、俺は言えないなと思いながらもサラッと言っちゃうところとか、すごいなあこの人みたいな。

笑

そういうスカッと笑わせてくれることとか、色々教えてくれるんだよね。なんか本当に会いたいなあというのを僕も思っているんですよね。

本当ですね、私も少し会いたくなってしまった。お話伺うと、なんかそうですよね。でもやっぱり顔見たいですよね。

本当そうなんですよね。だからちょっと自分ではどういうことで、その応援できるかなあというふうに思っていて、とにかく元気になって会いたいよっていうところが一つと。

そうですよね。はい。

あとは、すぐに在宅で医療できるレベルだといつでも待ってるよっていうところと、そんなところは本当に自分の中ではありますね。

Kさん聞いてますか?

それで、昔奥さんから聞いた話なんですけど、マイケル・ジャクソンを聞いてたと言うんですよ。

はい。

だからマイケル・ジャクソンで、Kさんに一番いいのは何かなっていう風に自分でこう(思って)、僕昔マイケル・ジャクソン聴いていたんで。

世代ですよね、私もそうです。

バットとかスリラーとか。

はい、世代です。

そんな中で何の曲がいいかなと思って、「You Are Not Alone」という、「あなたは一人じゃないよ」というとてもいい名曲があるので、この曲を聴いてもらえたらなというふうに思います。
(音声でお聞きになる方は下記のラジオを聴取ください)
icon-external-link在宅医療の心不全ついて 2025年4月19日・26日(土)の放送
icon-external-link『ラジオ在宅NOW』FM西東京 ラジオライブラリー
この番組は、当院の院長 松原清二が日頃医療の現場で感じることを話し、在宅医療に対しての理解をより深めて頂く番組となります。第一週と第三週に本放送、その他の週は再放送をお送りします。
icon-microphone 放送日
2025年4月19日・26日(土)放送分 | FM西東京 84.2MHz