2023年12月16日、23日、30日(土)のラジオ在宅NOWの放送のご案内です。
2023年12月のテーマは「痛みに対する治療について(2)」です。
痛みに対する治療について(2)
前回、麻薬性鎮痛薬(オピオイド)を患者さんに投与しても、最初のうちはほぼ飲まないことをお伝えしました。理由としては、麻薬を投与することで中毒になってしまうのではないかと言う不安や、使用することで自分が癌の末期であることを認めてしまう自己逃避があるのではないかと思います。
田中ヒロコさん「麻薬を投与することで、寿命が縮まることはあるのですか?」
いいえ、2006年の論文でも発表されていますが、痛みの強さに応じて、適切な量の麻薬性鎮痛薬(オピオイド)を投与すれば生命予後への影響はありません。また、痛みのある患者さんに麻薬を投与することで精神異常になるケースも稀であると言われています。
私の場合、治療の第一目的にしているのが安眠できなくなることです。突発的な痛みが起こることで安眠はできなくなります。安眠ができないと疲れもとれません。
そうは言っても、患者さんで麻薬は怖いと思ってる方はたくさんいますので、診療時に「そんなに痛いんだったら、飲むのを手伝ってあげるから」と言ってお手伝いすることがあります。
その後、患者さんに「どう痛みは?」と問うと「こんなに痛みがとれるんだ」と驚かれます。最初に1日の使用回数を決めて、次回の往診時にその回数のチェックをして投与の回数を設定していきます。
なかなか現実問題として、麻薬を投与しても痛みがとれない方もいらっしゃいます。例えば、骨に転移が見られる方については、注射薬を使ったり放射線治療などの往診の方針を変えていきます。
麻薬性鎮痛薬(オピオイド)の投与のタイミングについては、日本は諸外国に比べて遅れている傾向があります。日本人が痛みに耐える傾向があるかも知れません。
痛みの評価にたいしては、スケールで痛みの具合を判断したり、顔の表情で判断して推測をしていきます。基本的に痛みは主観です。多くの患者さんはこの痛みにたいして耐える傾向があります。身動きがとれなくなるまで痛みを我慢する患者さんもいらっしゃいます。
この場合、注射薬を投与することで痛みを緩和させれるのですが、もう少し早く、痛みの表出をしてくれると「敏速な対応ができたのにな」と思うことがあります。
我慢する傾向は日本の国民性もあるのかと思います。麻薬を使われることで、自分がエンドステージとと思われるイメージがありますが、本来は痛みの三段階除痛ラダーに応じて、投与する流れになっていかないと患者さん側も麻薬=末期と言うイメージをぬぐい切れません。
本来は正しい指導をするのが医師の役割だと思います。病気は残念ながら回避できなくても、病中も楽に過ごすと言うのが緩和医療の心髄ですし、そこをためらわずに使っていくことで、麻薬=末期ではないというイメージにもつながっていくと思います。
(音声でお聞きになる方は下記のラジオを聴取ください)
icon-external-link 「痛みに対する治療について(2)」2023年12月(後半)の放送
icon-external-link『ラジオ在宅NOW』FM西東京 ラジオライブラリー
この番組は、当院の院長 松原清二が日頃医療の現場で感じることを話し、在宅医療に対しての理解をより深めて頂く番組となります。第一週と第三週に本放送、その他の週は再放送をお送りします。
icon-microphone 放送日
2023年12月16日・23日・30日(土)放送分 | FM西東京 84.2MHz