先日、本屋大賞が発表され、今年は『カフネ』が大賞を取り、さっそく読んでみました。
内容は主役にあたる女性たちが炊事や掃除など何かしらの理由があってできない人たちへボランティア活動をしながら、何かを感じ、ときに自分の人生に投影するものでした。
その中の文の一つに「安心して食事を摂り、眠れる場を提供する」があり、生きるうえで一番大切だよなあと思いました。
私も訪問で訪れるご自宅の一つに、大酒家でときにお酒がこぼれ畳が染みてしまい、万年床で寝ている方がいらっしゃいました。
理事長 松原 清二
足の痺れを常時訴え、「ほっといてほしい、人に迷惑をかけたくないから」と話をされていました。
やがて畳の汚れや臭いも強くなり、畳の張り替えをして、薬で痺れの管理をしたところ、足の痺れが和らぎ、新しい畳の匂いがしてからは、ご本人も柔和な表情に変わりました。今ではお互い冗談を言い合えるようになり、良好な関係が得られています。
日頃患者さん自身の生活を見ていると、「この人は今の生活環境が故に、他人を受け入れられないのではないか?」と思う一方で、「こちらの支援が余計なお世話になっていないか」と思うところもあります。
ただ、今回の本や実体験からは、当たり前の結論かもしれませんが、地域が関わることで、患者さんが安心する環境作りの創意工夫は必要なんだろうと思います。
生活や考え方は十人十色です。どれだけ地域が患者さん、利用者さんに柔軟に対応できるか、それが各自治体の地域包括ケアシステムの運用のうまさの違いにつながるのかなと思いました。