先日、便が真っ黒になり、動けなくなり、食事も取れなくなったという80代の女性の方の往診依頼がありました。
診察をすると、消化管出血が疑われ、まずは消化管出血と脱水症に対して治療し、寝たきりの状態から、自室を歩けるレベルにまで改善しました。ただ、ご本人はなぜか階段を歩きたがりませんでした。
私も初診時から聴診で大動脈弁が狭いこと、脈拍が速く、不整があったことから、弁膜症や不整脈があるのではないかと感じていました。そこで、心臓エコーと心電図を行ったところ、やはり治療を考えなければならない不整脈と弁膜症がありました。
これらの疾患はすぐに発症するものではなく、加齢による要素が強いので、ご本人に改めて問診をし直しました。するとやはり数年前から階段を上ることが体にこたえていて、胸がドキドキしてつらいので、階段を上ることを控えていたとのことでした。
そこでこの方の頻脈管理などを中心に行ったところ、まだ不安で階段は上がれませんが、起立動作、室内移動が非常にゆっくりだった方が、若い方よりむしろ速く動いておられ、大変喜ばれていました。
今回のケースのように、歩くと息切れや動悸がするから、自然と動く範囲が狭まってしまう場合は心臓疾患によく聞かれる訴えです。
在宅診療の初診時には心雑音や脈の不整によく遭遇しますので、こまめに心臓の評価をすることは患者さんの生活の質を改善するのに役立つと改めて思わされました。
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Dr.matubara 2020-9