診察中、患者さんに「昔は何をしていらっしゃいましたか?」と聞くことがあります。
例えばアスベスト関係であれば、悪性中皮腫と病気との因果関係を知る目的もあったりしますが、その患者さん自身のパーソナリティをもっと知りたいから聞く意味もあります。
とある80代の女性の方は、自分は昔は英語の教師だったとお話をされていました。私も学生時代は英語は得意だったので、たまに簡単な英語を話して場が和んだりしていました。
理事長 松原 清二
ある日、その患者さんに「学校の先生をしていたときは、どういう気持ちで生徒に接していたんですか?」と尋ねてみたところ、「生徒と仲良くなりたいという思いで仕事をしていました」とおっしゃっていました。
自分が学生時分は、あまり学校の先生方の本音を聞くことはなかったのですが、学校の先生はそういう思いで生徒と接していたんだと思うと、胸がジーンと熱くなるものがありました。
私は在宅医療に関わるため、割合としてはご高齢の患者さんが多いのですが、いろいろな患者さんの現役で働かれていたときの職業に対する思いを聞くと、現代の世の中はそういった思いの結晶で出来ているんだなとしみじみ感じます。
さらに現役当時のお話を聞くと、皆さん、本当に誇らしげに当時のお話をされる方が多く、そんな姿を見ると、その人の中の力強さを感じ、心の中で「まだまだ大丈夫だよ。一緒に頑張ろう!」とエールを送っています。
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職業(在宅診療NOW 2022年7月)
Dr.matubara 2022-7