先日、胃瘻(いろう)カテーテルを留置している女性患者がカテーテル留置付近を痛がっていました。
胃瘻とは栄養を口から取ることが難しい方が、体表からおなか側の胃壁までの道、瘻孔を手術で作り、そこにカテーテルを留置し、そこから栄養を入れる方法です。
通常はトラブルが起きることはないのですが、何かしらの原因で瘻孔からカテーテルが飛び出してしまい、そこに栄養を入れてしまった場合、おなかの中にある本来は無菌の腹膜に散らばってしまって腹膜炎を起こすことがあり、注意を要します。
理事長 松原 清二
そこでそのような可能性を懸念して、胃瘻カテーテルを抜こうとしたのですが、必要なデバイスを使用してもビクリともせず、患者さんは大変おなかを痛がっていました。
これは困ったと、外科の友人にテレビ電話をし、状況を説明したところ、それならばとテレビ電話を介して、カテーテルを引き抜くべき力、デバイスの使い方のコツを教えてくれました。そこで、改めて指導を受けながらじわじわとカテーテルを引き抜きました。
そのかいあって、ズボッと無事にカテーテルが引き抜け、患者さんがおなかの痛みがなくなったと言ってくれた時には私もほっと胸をなで下ろしました。その後は新しいカテーテルを入れ直し、トラブルはありませんでした。
最近は遠隔で5G回線を使用してロボット手術を行うことも考えられています。このようなテクノロジーの進歩の中で高齢社会になり、病院通院が困難になる方は増えることが予想されます。
そこで在宅医療では、このようなデジタルデバイスをうまく使い、自宅でも医療の質を保つことが大切であると改めて思いました。
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テクノロジーの進歩と在宅医療(在宅診療NOW 2022年6月)
Dr.matubara 2022-6