最近、総胆管結石、胆管炎になった80代の患者さんがいました。
以前入院したときには、一時的にご自身の状況が分からなくなり、点滴を自分で抜いてしまったりして入院継続が難しい患者さんでした。そこで友人の外科医と私で、知り合いの先生の病院で胆道の通りを良くするストロー状のステントを胆道の入り口に入れる治療を日帰りで行い、その日の夜に私がまた回診に行くことで対応しました。
手技中、患者さんは胃カメラを飲んだ状態で、うつ伏せで30分ほどかかるため、忍耐が求められます。帰宅後は、処置されたことを忘れてしまうほどのストレスだったようでした。
しかし翌日にはいつも通りの表情で、数日間の点滴の後、日常生活も速やかに回復しました。恐らく前の入院の経過からすると、もし入院での処置や管理を行った場合は、残念ながら我を失い、点滴も外してしまい、治療上必要といえども抑制のために寝たきりの状態になってしまったかもしれません。本来このケースは入院で治療するものですが、後から振り返れば、患者さんに日帰りでできる治療を提供できて良かったと思いました。
高齢者医療で大切なことは、その人らしさを失わないことを軸に治療をしていくことです。高齢者は環境の変化に大変弱く、自宅でできる医療は自宅で行うことが在宅医療で求められています。また医療機器のコンパクト化や、在宅医療で使い勝手の良い薬剤も出ています。それに加えて、私を支えてくれている友人やスタッフの力添えがあり、自分の想像よりも進んだ医療水準で患者さんの自宅療養を支えられるようになっています。
自分自身、今後どういった医療がご自宅にいる方に提供できるかと考えると、在宅医として気持ちが高揚するところがあり、ひいては患者さんにも医療において恩恵を還元できるのではないかと信じています。
(タウン通信2019年7月3日号より)
Dr.matsubara2019-07