先日、東京都が主催の認知症サポート医フォローアップ研修で、認知症困難事例に対しグループワークをしました。
症例は高齢男性の方で、分かっていながら無銭飲食を繰り返してしまうケースでした。よくよく話を聞いてみると、もともと物の整理に無頓着な気質に、認知症も加わり、生活力が落ちてしまって窃盗を繰り返してしまうとのことでした。
認知症の場合、患者さん自身が社会とどう関わっていくかが治療の視点では重要になります。今回のケースで問題になるのは窃盗です。
理事長 松原 清二
人間の脳の理性に関わるところは前頭葉です。そこで、このケースでは、前頭葉に何か問題がないか画像検査をすることが大切になります。それによって前頭側頭葉型認知症と分かれば、薬物治療には限りがあるので早期に施設への入所を考えます。あるいは、前頭葉領域の脳梗塞など血流障害があれば、血圧管理や血液をさらさらにする薬などでの治療を検討します。
認知症という言葉は、認知機能が病的に後退した症候群であり、病気の呼称ではありません。しっかりした診断を立てた治療介入が必要です。
日頃の診療でも認知症で困っている方は、ご本人、家族とも、大勢いらっしゃいます。早めに医療機関に相談し、治療の道筋を立て、生活介助などの介護サービスの導入や、在宅で出来ることと出来ないことを話し合うことが大切です。
同時に、在宅で認知症の治療を続けられるかどうかは、患者さんの認知症治療の効果が出るまで社会が寛容できるかにかかっています。社会全体として、認知症の治療にどれくらい時間がかかるかの理解を深めていくことが求められています。
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認知症の困難事例(在宅診療NOW 2022年12月)
Dr.matubara 2022-12