先日、日本循環器学会で、健康の社会的決定要因について取り上げていました。この考え方は何かというと、健康は遺伝子や生活習慣など生物学的要因だけで決まるわけではなく、社会的要因も大きく関わるというものです。
例えば、急性心筋梗塞になった場合で考えてみましょう。通常はステントという金属の梁を冠動脈の狭くなった部分に入れるのですが、異物となるステントに血の塊がへばりつかないようにするために、血をサラサラにする薬を2種類しっかり飲んでもらう必要が生じます。
理事長 松原 清二
ところが、退院後、経済的事情のために、薬剤を飲むことを自己判断でやめてしまう方がいます。再度血管が詰まって緊急搬送になることもあり、ここには経済という社会的要因が入ってきています。
翻って、在宅診療の場合はどうかと考えてみました。在宅診療の場合、今まで病院に行きたくても行けない人に手を差し伸べる、つまり環境要因の改善としては有効であると思います。ただ、訪問診療における費用は、入院よりは抑えられているものの、通常外来より掛かります。そこの部分は各人の医療保険の自己負担額で決まります。
経済的要因については、そこで自分が受け入れられるかどうか、経済面の不安を改善できる方法がないかを考えなければなりません。また、孤立している方の場合は、診療を介して、人と人とのつながりを確保している面もあります。
大切なのはこうした社会的要因の格差も日頃の診療で縮められることです。当院がその助けになれば良いなと思います。
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健康の社会的決定要因(在宅診療NOW 2023年5月)
健康の社会的決定要因(在宅診療NOW 2023年5月)