「もう生きたってしょうがない。足腰も弱ったし、娘にも迷惑かけてるもの」
と長生きされることを嘆く患者さんは少なからずいます。これはこの方にとって生きがいとは何かという問いに対しての嘆きを意味しています。
内閣府の統計によれば、65歳以上と85歳以上の方々の比較では高齢になるほど生きがいが少なくなっています。また、性別でいえば特に女性に変化が出やすく、親しい人や家族との会話が少なくなったり、社会活動に参加しなかったりすると、生きがいが少なくなるといわれています。さらには健康度合いが落ち込むと、より生きる張り合いが落ちるともいわれています。
理事長 松原 清二
私が日頃診療をしている患者さんには、「この方には何ができるのかな?」と自問自答を常にしています。外出が可能な方なら、デイサービスや社会福祉協議会が設けている体操や教室、各種セミナーなどに行くことをお勧めします。ただ、なかなかその一歩が出ない、出向こうとしない……という方が多数なのも現実です。
生きがいという直接的な問いに対し、明快な答えはなかなか出ませんが、日頃の診療では病気はもとより、その方の人生を知り、たくさんのことを共感するという、そんなコミュニケーションを醸成することが大切だと思っています。