「暑いなあ。この部屋は」と思い、年配の患者さんの顔を見ると、「そうですかねえ?」と平然とされている――そんな場面は日常茶飯事です。ところが、よくご様子を窺うと、顔や全身から汗を流していらっしゃいます。
暑さに対する生体反応としては、◎皮膚で温度を知覚→◎身体の深部体温を下げるために末梢血管が拡張→◎心拍数を増やして冷えた血液で身体を冷やすといったことや、汗として体表に水分を出し、気化熱として蒸発させることで身体を冷やすというシステムがあります。
ただ残念ながら、加齢に伴い、皮膚の温度センサーが鈍くなったり、こういった生体反応が鈍くなってしまって、身体が守れなくなってくるということが起こります。これが高齢者の熱中症のメカニズムです。
理事長 松原 清二
日頃の診療で、こういった暑さに対する体感差を埋めるにはどうしたら良いのかな、とここ数年考えていました。炎天下で働いている労働者の方の管理はどうなっているのか調べたところ、暑さ指数を確認しながら働くことを推奨しているという話がありました。
暑さ指数とは、気温、湿度、風や照り返しでの温まりなどを総合的に判断し、熱中症になるリスクを数値化したものです。
最近はこの暑さ指数計を首からぶら下げて、患者さん宅を回り、特に重度警戒レベルの患者さんには、「このままだと倒れちゃいますよ」と計量計を見せると、私と患者さんの暑さに対する体感温度の違いではなく、事実として危険な状態にいることが客観視できるようになり、「そうか、危ないんだ」と納得して、冷房をつけてくれるようになりました。
これが診療の時だけではなく、患者さんにとって、日常の外気温管理の意識づけになればと思います。