先日、とある基幹病院で診療所や病院との懇親会がありました。退院した患者さんの件で、主治医の先生と話をしたく、これは良い機会だと思い、出席しました。
患者さんは血液の癌の方で、抗がん剤治療は効果があるものの、副作用がつらく、自宅で最期を過ごしたいという方でしたが、ご自宅では新たに麻痺症状が出てきたため、新たな脳転移発症の可能性を含め、精査加療目的に再入院を依頼しました。
懇親会で病院の主治医と直接話をしてみると、当初は抗がん剤治療も行わずに自宅での看取りを含めて考えていましたが、再入院直後は患者さん自身の治療への希望がぶれ、再度の抗がん剤治療に至るまでに苦労があったことなどを聞けました。
理事長 松原 清二
それに対しこちらからは、在宅医の考えとして、抗がん剤は以前奏功しているので、今回も再度抗がん剤治療をチャレンジしたり、脳転移であれば放射線治療をすれば症状の改善につながるのではないか、と話をさせてもらいました。
話し合っているうちに、患者さんや家族の揺れる思いを受け止めるのは難しいけれども、病院主治医、在宅医共に、時に戸惑い、少しずつ理解していきながら、治療を進めるしかない――ということでお互い納得しました。
緩和医療は、家で治療ができることと、放射線治療や抗がん剤治療、場合によっては外科的治療など、病院で行うこととを選別しなければなりません。
積極的な治療を行わなくなった=治療をしないということではなく、その時々で行える治療を患者さんの状態を見ながら、選択し、行なっていくことが患者さん、ご家族には最善のはずです。当院ではそう信じて緩和医療を行っています。
在宅に戻った患者さんが再度病院を頼る際に、「何で病院?」と病院主治医が戸惑わないように、今後もこのような意見交換を行い、患者さん、病院、我々も満足する形で診療を行なっていきたいと思います。